祖母の言葉
毎年お盆とお正月は、祖母の家で過ごした。
わいわいと賑やかに過ごして、見送ってくれるときにいつも必ず祖母が言うことがあった。
「待っているのは楽しみだけど、来てしまえばあっという間で、帰ってしまうのはほんとに寂しいわぁ」
毎回そんなこと言わなくてもまた来るのになぁと、子どもの頃は思っていた。
祖母はいつも、車が見えなくなるまで見送ってくれていたけど、車が走り出してしまえば、祖母の寂しさは私の中からはふわっと消えていた。
昨日、東京から来た友達が家に泊まって、さっき出発していった。
彼の後ろ姿が見えなくなるまで見送っって、ひとり残った自分が、ふいにあの日の祖母と重なった。
"帰ってしまうのは、ほんとに寂しいわぁ"
うん、そうだね。
寂しいね。
あの時の祖母の気持ちに、ほんの少しだけ触れた気がした。
迎えると見送るは、セットだからね。
寂しいってことは、その分嬉しかったってことだよね。
「いってらっしゃい。また来てね!」
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