祖母と小さな自分
「あんたは、やさしいねぇ」
今でも時々思い出す、祖母の言葉。
家族旅行といえば、お盆と年末年始の里帰りだった。
名古屋と静岡の両親の実家へ、受験の年を除いて、高校卒業まで毎年欠かさず帰っていた。
祖母はだんだんと足が悪くなり、歩きがゆっくりになっていた。
みんなで歩いていると、だんだんと祖母だけが後ろにいってしまうのだ。
だから私はわざとゆっくり、祖母の隣を一緒に歩いていた。
その時に祖母が、本当に嬉しそうに、そう言ってくれたのだ。
照れるような恥ずかしいような気持ちになって、そんなことないよ、とか言った気がする。
20年近くたった今、あの時をこうやって思い出すなんて、不思議だ。
言葉は、何よりの贈り物だと思う。
きっとこの先ずっと、祖母の言葉は私の中にあり続ける。
あんたは、やさしいねぇ
今の私は、優しいんじゃなくて、怖がりなだけ。
でもだからこそ、優しく強くありたいって願うよ。
おばあちゃんの言葉と、ゆっくりと歩く小さな自分を思い出して、背筋が伸びた。
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